ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ1812
東京芸術劇場プレイハウスに、ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ1812を観に行く。トルストイの「戦争と平和」が原作のミュージカルだが、元の話を全く知らない状態で観劇した。簡単な人物相関図が配られるので問題なし。舞台上に、コメット・シート(飲食可・ワインも飲める)という客席があり、演者は全方向に向けて演技し、客席と舞台の境目が溶け合うようなつくりのセットになっている。すごく楽しかった!
マチネはコメットシートで観劇。豪雪地帯(一曲中まるまるポップコーンの雪が降り注ぐ席)にあたり、全身雪まみれになる。ここまでくると笑うしかない。客席参加型演出が得意な方ではないのだけれど、ノリのいい音楽がすっかり気に入ってしまったのと、コメットシートからだとセリフの聞き取りにくい箇所があったので、ソワレのチケットを買いたす。これが大正解だった。コメットシート と通常席から見たことで、頭の中で1カメ2カメ3カメという感じでカメラが立ち上がってきて内容が立体的に見えてくる。
コメットシート について
コメットシートからは、普段は出演者しか見られない景色が見渡せた。入退場時にはどセンターにも立てる。プレイハウスは段差がついた卵型の美しいつくりなので、舞台側から客席を眺めても、通常席から舞台を眺めてもうっとりしてしまう。舞台の奥行きや、天井から吊ってある彗星や星の散りばめられたセットの美しさ、役者の浴びるスポットライトの光の強さを体感できた。
強く感じたのは、観客席で聞こえる拍手の音量と舞台上で聞こえるそれは全然違うってこと。幕やなんかに音を吸われ、5割くらいの大きさになってしまう。よかったよ!を伝えるには、めちゃくちゃ頑張って拍手するべきなんだなと思った。
曲について
聞いてもらうのが一番早いのでApple Music貼っときます。Amazonでも聞ける。定額配信サイトはミュージカルCDが充実していてありがたい。パーティのシーンでかかる曲はEDM。
- プロローグ・人物紹介曲。ややこしいからざっくり説明するよ!って親切設計。ピエールの弾くアコーディオンから始まるhttps://itunes.apple.com/jp/album/prologue/1225252826?i=1225252828
- ヒロインのナターシャと、小姑になる予定のマリアが初対面でこいつとは気が合わねーな!とお互いに確信する曲。不協和音が気持ちいい。https://itunes.apple.com/jp/album/natasha-bolkonskys/1225252826?i=1225252832
- ピエールが歌う6分間を超えるビッグナンバー。自問自答から始まり、徐々に感情が高ぶっていき、賛美歌のようなコーラスを経て、絶唱に至る。ミュージカルの歌は台詞なんだと実感できる曲。https://itunes.apple.com/jp/album/dust-and-ashes/1225252826?i=1225252837
演者さんについて
ピエール : 井上芳雄
- この人の演じる鬱屈したキャラクターが好きな自分にはご褒美でしかなかった。主役の割にソロナンバーは少なめだけれども、「塵と灰」の一曲で場を圧倒した様はさすがの一言。
<ピエールが舞台上でやってたことメモ>
- 花道に小さいクッションをおいて体の右側を下に寝そべって足をバタバタさせる/クマのぬいぐるみとたわむれる/マトリョシカを磨く/マトリョシカを分解してピアノの上や花道にならべる/分解したマトリョシカをただしく元に戻さない/マシュマロ的な何かを食べる/酒を飲む/馬のぬいぐるみでなんかする/本を沢山抱えてきて舞台中央ですっころぶ/中華風の帽子をかぶって部屋の中でウロウロしてる/ロシアの半纏?的な上着を着る/鮭の形をした陶器の酒瓶で酒を飲む/無表情でエッグシェイカーをふる/瞬間的な息継ぎでえげつないロングトーンを出す/総じてかわいすぎる
ナターシャ : 生田絵梨花
- かわいい!「みんなが私のことを大好きなので!」的な歌をうたいつつスキップする様が、羽海野チカの漫画の中の人みたいだった。
アナトール : 小西遼生
- 足が長すぎてこの人が目に入ると縮尺が狂う。笑えるくらいのイケメン役が様になっていた。ブロードウェイ版CDのキャストと声がそっくり。
エレン : 霧矢大夢
- 1番のイケメンはこの人ではないのか?というくらい立ち居振る舞いがかっこよかった。ナターシャとエレンがカップルになっても不思議ではない。ドレスの裾さばきが男役のそれだった。シャーマンテ、シャーマンテ!
- 老人役というには声が若すぎるんだけれども、動きでカバーしていた。全身ステテコの上からでも筋肉がすごいのがわかる。
マリア : はいだしょうこ
- 透明な声。生田さんとの声の相性もよくて、不協和音がきれいに響いていた。笑いのパートも良かった。
ソーニャ : 松原凜子
- 破滅の道を選ぼうとしているナターシャを止めてみせる。たとえ疎まれたとしても!と歌い上げるソロナンバーが圧巻。この人のエポニーヌ役を見たくなった。
ドーロホフ : 水田航生
- 「ゲゲゲの先生へ」に出てた人だと気づくまで時間がかかった。役者さんはすごいな。